2004 Sumatra Earthquake (M:9.0; Dec.26, 2004)  

  最初に、この地震ではインド洋の沿岸で10万名を超える方がなくなった。2005年に入っても、その被害の全貌は把握できていない。被災された方に合掌する。予想外の地震ではあるが、私達の認識がまだまだ不十分であることを見せつけている。津波の波源となったスマトラから北西のアンダマン諸島での破壊については、高帯域の地震計ですら忠実に観測できていない。残念ながら、波動が掴めないのである。
 私は1989年にスマトラの北部、メダンからパダンまでGPS観測で4週間ほどテント生活をしている。スマトラ西岸のナタール、ササックでそれぞれ一週間滞在している。当時、世話になった村人らは無事だろうか。(この記録は「スマトラ観測キャンプ4週間」として慈悲出版した。若き日のBock教授のダンシングの写真も掲載されている。まだ少し在庫がある)

名古屋大学地震火山防災研究センター 木股文昭  
それぞれの図をクリックすると拡大表示されます

USGS

破壊過程(八木)

破壊過程(山中)

USC Tsunami

Seth Stein

TIME Stein

Danny H. Natawidjaja

Sumatra plate boundary Project


地球を8回もまわった地震波 (北大理)

防災科研スマトラ地震特集

Asahicomの特集

アジア・太平洋地域における国際地震・火山観測に関する調査研究 (DAPHNE) プロジェク

北スマトラ アチェでGPS観測を開始する

 振興調整費による調査で、名古屋大学はバンドン工科大学、シアクラ大学、BPPT省と協力し、3チームでアチェ市周辺、メラボ、シムル島に設置されていたGPSによる基準点を探し回り、GPS観測を実施した。そしてシアラク大学で連続観測を開始した。この観測の前に、バンドン工科大学ではスマトラ地震に関するワークショップを、シアラク大学でGPSに関する特別講義を実施した。下図で基点0280から西海岸沿いに南下を試みたが、集落や三角点が海に没するなどアクセスは遮られた。メラボのチームも北上を試みたが、これも道路寸断で不可能だった。すでにBAKOが東海岸とメラボ、シムル島の三角点で改測を実施し、アチェとシメル島でLIPIとカリフォルニア工科大学が連続観測を開始したが、盗難などに面している。三月末までに観測点での水平変動を解析したいと考えている

Acehが沈降した   IKONOS衛星の画像が語る

 2月に環境学の調査団でAcehに入る。どの程度の沈降が確認できるかと期待した。しかし、多くは津波による浸食が多く、少なくともAceh市街では±20cmを超えるような上下変動は認められなかった。しかし、西海岸に入ると、海岸沿いの林が海へ埋設し、明らかに沈降が認められた。下記に指摘するところも、すでに水はなくなっていた。

 シンガポール国立大学は、今回の地震津波で襲われた地域の衛星画像を整理している。彼の仕事から、インドネシアのアチェでは、今回の地震により、1m程度の地盤が沈降したと考えられる。下図の左が地震前の衛星画像、右が地震後の衛星画像である。場所はアチェの西方、インド洋に面した海岸と推定される。明らかに、地震前の水田が水没していることが明確である。主要道路が水没していないことから、水田の高さと道路の高さに相当する分が沈降量と推定される。図をクリックすると拡大する。それにして恐ろしい分解能の画像である。我が家の稲作状況も確実に判明できそうである。

View image captured on 10 Jan 2003


View image captured on 29 Dec 2004

GPSデータから捉えた地震波動

名古屋大学のIrwanさん(D2)と太田君(M2)は、IGSのGPS観測データから、震源近くで1秒サンプリングの観測が実施されていたBA2とIISC(ともにインド)の2観測点についてkinematicな解析を試みた。Irwanさんは7km離れるBA2における変位を解析した。下上図に示すように、わずか7kmしか離れない2点間だが、地震発生後約600秒後に2cmに達する2cmあまりのパルス的な変位、そしてその後に20秒周期で変位が±1cmの振幅で検出された。
一方、太田君はIISCの絶対的な変位を水沢(日本)などの観測点からkinematic的な方法で推定した(下下図)。彼はsidereal フィルター(Choi et al.,2004) でs/nを向上させている。その効用はこちら。震源から2270km離れるIISCでは地震発生から9分21秒後に南西方向に3−4cmの変位が検出され、その後に15−30秒周期で南西ー北東方向に動いているのが明確である。これらの検出された波動について、地震計記録などと対応させ、実態の解明に取り組んでいる。

スマトラ東海岸のメダンが西方向に12cm動く

スマトラの北東岸に位置するメダンではGPSの連続観測が実施されていた。Irwanさんはさっそく、そのデータから毎30秒毎の解析を試み、下左図に示すように、地震発生から2分後、メダンがシンガポールに対し西方向へ12cmほど動くことが確認された。右図は橋本さんによる同じメダン観測点における地震前後各10日間の座標である。彼はインドオーストラリアプレート上にあるCOCO観測点に対する変動を求めている。地震時に西へ10cm、そして余効変動も6日間で1cmほど観測されている。彼によれば、シンガポールは2cm程度西へ変位している。

震源地付近のGPS観測網  SUGAR GPS net workと日本のGPS気象学ネット
 Danny H. NatawidjajaさんはITBの地質を卒業、CaltechでPhDを取得した気鋭の研究者。西スマトラに発達する珊瑚礁の成長速度から、1935年イベントをモデル化した。そして、その後、GPS観測による現在の地殻変動の研究まで進展させている。その彼を中心に、ニアス諸島を中心に15点のGPS観測網が設置されている。数点で連続観測が実施されている。D. H. Natawidjaja et al., 2004, Paleogeodetic records of seismic and aseismic subduction from centralSumatran microatolls, Indonesia, JGR, 109, B04306, doi:10.1029/2003JB002398
. 日本もGPS気象学プロジェクトでインドネシアマレーシア、タイなどにGPS連続観測点を設置している。しかし、残念なことに、システムの問題などで欠測もかなりあるという。また、来年度から開始されるアジア・太平洋地域における国際地震・火山観測に関する調査研究 (DAPHNE) プロジェクトでもGPS観測網の強化が計画されている。

津波の襲撃  下の図をクリックすると拡大表示に
惑星テラ見聞録のサイトによれば、デジタル・グローブのクイック・バード衛星は、現地時間で2004年12月26日午前10時20分に、スリランカのカルタラ周辺で、津波の第一波によって荒廃した映像(図左)を捕らえました。水が、水浸しにされた地域から海へと流れて、沖合いで乱れた流れになっています。  岸に近い通りと浜辺沿いの家々の庭が、泥だらけの水で覆われています。  映像は、波頂上との間の「谷」で得られたと推測できます。  近くの浜辺の境界線が、海岸線から150メートルほど退いたことを示しています。(同上サイトの説明文より)。スリランカ以外にもアチェなどの画像もあります。
産業技術総合研究所による津波の伝搬(図右)では、 本震から24時間に発生した余震の範囲を震源域として、波源とみなして,そこからの津波の到達時間を計算してみると,プーケットやスリランカまでは2時間程度となります.また,インド洋全体について計算すると,アフリカ東海岸へは8−12時間後に到達したことがわかります.津波伝搬のアニメーションも計算されています。

お詫び 1月23日まで紹介していた津波の画像は、スマトラ沖地震のものでなく、2002年に撮影された中国杭州の銭塘江を遡る潮汐波(tidal bore)のものでした。お詫びし、指摘いただいた大村 誠さん( 高知女子大学)に感謝します。詳しくは、http://www.snopes.com/photos/tsunami/tsunami1.asp

 

地球を8回もまわったスマトラ地震の波動 (北大理 吉澤さん)

 日本の高密度広帯域地震観測網(F-net)の記録を詳しく解析すると,実に地球を5周以上した地震波が明瞭に検出されている。いかに大きな地震であったことを忠実に裏付けている。

リモートセンシング技術センターによるスマトラ西岸の変色域

 Terra/MODIS衛星はスマトラ島北端沖合いに約80kmに渡って伸びる幅2kmから5kmの変色海域を捉えた。 撮影時間は地震発生から2時間40分後経過している。津波による変色なのか、海底地殻変動による変動か、解明が待たれる

山中さん(地震研)による遠地実体波解析
EIC地震学ノート No.161


推定された断層は150 x 560 km、食い違い量は最大で 13.9 mに達する。左図で★印が最初の地震、それが南西方向へ200kmもとんで、次なる主破壊が生じたと考えられる。

八木さん(建築研究所)による広帯域地震計波動による震源過程

八木さんによれば、「 まず,M8クラスの断層滑りが発生して(第1ステージ),その後約80〜120秒後に長周期の波を大きく励起する断層滑り(M9クラス)が発生しています(第2ステージ).ラフに,その長周期の波を発生させる断層滑りの開始点を求めてみると,震源より北北西に約400〜500km進んだ地点で第2ステージが開始しています.単純に考えると,S波速度に近いもしくは超える速度で断層滑りが伝搬した可能性が高いです」

USGS 余震分布と過去の地震活動
 
現在までの余震活動
最新の結果は下図をクリック

防災科研のサイト
現在までの余震活動 データはUSGS
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1900年以降の地震活動 
USGSのデータによる  クリックで拡大

鷺谷さんのコメント「1941年の地震は、宇津先生のカタログではGanse and Nelson(1981,1982)の世界の重要地震カタログが参考文献になっています。死者数はfew、被害はsevereということですが、理科年表は宇 津カタログに基づいていますが、別資料による値として死者5千?との記述があります。 いくら何でも5千人もの死者が出ていれば、現地の人の記憶に残りそうなものです」

インドネシア周辺の震源分布図と本震周辺の断面図
(M4 以上; 1973/01/01 ? 2005/01/04)
防災科研による

震源地周辺における過去の大地震とテクトニックマップ
Danny H. Natawidjaja  
参考
17世紀に北海道で発生した巨大地震後の地殻変動