特別セミナー 2012/11/27


日時: 2012年11月27日(火) 10:00-11:30
場所: 環境総合館1階レクチャーホール
講演者: 浜口博之先生(東北大学名誉教授)
タイトル: 1888年磐梯山水蒸気爆発の研究に潜むジレンマについて





要旨:

 ジレンマ(dilemma)とは一般に“相反する2つの事柄の板挟みの状況”と“事物 がうまく一致しないこと”を指す。科学の世界でも分野ごとに特有なジレンマが存在する。磐梯山の噴火には事実認定や解釈をめぐってジレンマが数多くの存在する珍しい事例である。観察や解釈上の主なジレンマを列挙すると次の5つがある。いずれも噴火過程の基本事項に関係しており、1888年磐梯山爆発の理解が混乱して見通しがつかない状況にあるかを明示している。

①噴出火口の数:「火口は1つ」(関谷・菊池,1888)versus「火口は2つ」(大塚,1890)
②噴出方向:「最後の一発は北に抜けた」(関谷・菊池,1888)versus 「一つは枇杷沢に向て(南東に)発し..」(大塚,1890)
③噴火規模:「水蒸気爆発は小規模」(守屋,1988)versus 「世界の水蒸気漠爆発の中で最大級」(Baruberi et. al. 1992)
④爆発の推移:「爆発は短時間で完了」(守屋.1988)versus 「崩壊は時間をかけて多段階的に・・」(Yonechi,1988)
⑤爆発の原因:「マグマと水の接触によるもの」(関谷,1888)versus 「マグマから分離した,H2Oガスによるもの」(菊池,1888)

 ジレンマがあるということは、常に選択肢があることを意味する。ジレンマに直面した時に、不一致の証拠を否定したり、時には無視したりしてジレンマを回避することもできる。あるいは、不一致な点を適当に処理して通り抜けることもできるが、これらの態度はいずれも主観的要素の濃い対応である。従来の磐梯山の研究ではジレンマへの対応を曖昧にしてきたため研究の発展が袋小路に入り込んでいるとの印象を与える。この状態から脱出するには客観的かつ科学的な方法でジレンマを切り抜ける挑戦が求められる。
 本講演では、構造探査による3次元地下構造や最近の地震活動の情報等を旧来の情報に加味してジレンマからなんとか抜け出そうとした挑戦の結果を報告する。


感想:

 今回の浜口博之先生によるセミナーでは1888年磐梯山水蒸気爆発の研究についてお話をしていただきました。
 120年以上も昔に起きた磐梯山の噴火については、噴火の様子を描いたスケッチや噴火前の有感地震の証言という情報が残っています。その解釈の曖昧さがある情報に最近の地震活動や研究による地下構造といった新しい情報を用いることで、噴火源や地震動の範囲を定量的に示して当時の火山噴火の理解をはっきりさせることができるという興味深いお話でした。
 また、お話の中で地震学の考えについて昔と現在とでの違いも触れられており、現在の研究においても物事に対して固定したものではなく柔軟な考えを持つことが大切なのでは、と感じました。

M2 大藪 竜童



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