特別セミナー
日時::2006年10月16日(月) 13:30-
場所:環境総合館 第3講義室



筑波大学 生命環境科学研究科 地球進化科学専攻 助教授 八木勇治氏
講演タイトル:「スラブ内地震の震源過程モデル」

海洋研究開発機構(JAMSTEC) 地殻ダイナミクス研究グループ研究員 堀 高峯氏
講演タイトル:「南海トラフ沿いの巨大地震発生サイクル-シミュレーションから見た発生間隔と規模変化のメカニズム-」



講演要旨(主催者:伊藤武男助手)
・「スラブ内地震の震源過程モデル」 八木勇治氏(筑波大学助教授) 
多くの地震のすべり分布やメカニズム解から地震の発生場、および震源破壊過程の特性について検討したことを紹介します。
・「南海トラフ沿いの巨大地震発生サイクル -シミュレーションから見た発生間隔と規模変化のメカニズム-」 堀 高嶺氏(JAMSTEC)
南海トラフ沿いの巨大地震の発生間隔と規模は、time predictable modelのもとになったように、1707年以降は規則性をもって変化したと考えら
れています。本セミナーではその規則性のメカニズムをシミュレーションから探った研究について紹介します。


セミナーの感想

 お二人の話を聞いて実感したことは当たり前のことではあるが,研究の方法 はいろいろある.ということである.八木さんのお話はスラブ内地震の震源過程についてであった.震源過程を求めることで,スラブ内地震のタイプ分けをされていた.スラブ内地震は沈み込むスラブに平行な断層をもつ地震が多く, その発生メカニズムがまだわかっていないということで,とても興味深かった.震源過程モデルと聞くと,通称名がつくような大地震のすべり分布についての研究.というイメージが私の頭の中にできあがっていた.だからある一つの大地震をターゲットにした研究とは違う今回の発表はとても新鮮に感じた.
 また堀さんは摩擦法則を使った東海・南海地震発生シミュレーションのお話をされた.摩擦法則は言葉としてはよく聞くが,一体どうやって使うのか私はイメージできていなかった.したがって今回のお話を聞いて,こんな風に使うのかと驚いた.一つの手法や現象をどのような目的に沿って使うかによっていろいろな研究 ができるのだと,今さらながら改めて感じた.やはり論文を読んでいろんな研究に触れることは重要なのだ.普段,論文読みをさぼり気味(さぼり気味というよりさぼり過ぎ)な自分を反省した.

(環境学研究科地球環境学専攻M1 大石真紀子)

八木 勇治 さん 「スラブ内地震の震源過程モデル」
・海溝で起こる地震の主な関心をプレート境界型地震に向けている僕にとって今回の講演はみずみずしく感じられた。海溝域で起こる地震はプレート境界を断層面とするプレート境界型の地震と沈み込むプレート(=スラブ)内でおこるスラブ内地震の2つのタイプに分類されるが,今回の講演はスラブ内地震がどのような場所に起こるのかを地震波形解析から推定するというお話だった。スラブには沈み込みの際の曲げに起因する応力場が存在するため,八木さんもある程度予測を立てて解析を進めたそうだが思ったような結果が得られなかったとのこと。自然科学の世界は奥が深い。

堀 高嶺 さん 「南海トラフ沿いの巨大地震発生サイクル」 -シミュレーションから見た発生間隔と規模変化のメカニズム-
・過去に南海トラフ沿いで発生した巨大地震からその発生間隔と規模をシミュレーションしたという内容の講演であった。シミュレーションに多少難があるようだが,地震学的にもまた社会的にも意味の大きなシミュレーションであると考えられる。現在想定する規模の地震が想定する時期に発生するのか,またはまったくの予想外の結果となるのか。
 次回発生する地震を明らかにすることは大きいと考えられるが,それをただ待つのは面白くない。次回の地震を生かすためにも海底地殻変動観測システムの開発は急務であると改めて感じた。

(環境学研究科地球環境学専攻M1 安田 仁)

講演者:八木勇治(筑波大)
講演タイトル:スラブ内地震の震源過程モデル
 海洋プレート内で破断を生じるようなタイプの地震であるスラブ内地震をターゲットにした遠地地震のP波周辺の長周期成分を用いて、その震源過程を求める過程について八木さんに講演していただき、最適な断層モデルを求める手法について細かく知る事ができた。このタイプの地震はプレート内で発生するため、地震波が地表面からの反射の影響を受けにくく、また震源から遠く離れた場所においても大きな震度が確認されるような異常震域がみられることがある。八木さんによるとスラブ内地震は断層面の傾斜が45度以下の地震、スラブ と平行な方向に沿って起こる地震、傾斜が45度を超えるような高角な断層面を持つ地震にわけられ、特に断層面の傾斜が低角である地震が多いとのことであ る。スラブ内地震が発生するメカニズムは蛇紋岩のような含水鉱物による脱水過程によって液体が弱面に入り、その面の強度低下によって地震が発生すると考えられている。スラブの脱水はプレートが沈み込む島弧の地震活動(プレー ト境界型地震、上盤側のプレート内地震)やスロースリップとほぼ同時期に発生することがある低周波微動などを考えるうえで非常に重要な鍵を握ってお り、スラブ内地震の震源破壊過程との関係性について改めて興味がわいた。

講演者:堀 高峰(JAMSTEC)
講演タイトル:南海トラフ沿いの巨大地震発生サイクル-シミュレーションから見た発生間隔と規模変化のメカニズム-
 今後、発生が予想されている東海・東南海・南海地震について、その南海トラフ沿いで起こる巨大地震の発生サイクルのシミュレーションの研究をされている堀さんの講演は東海地方に住む私にとって非常に身近な問題として学ぶ事が多かった。過去の南海トラフ沿いに起こった巨大地震の発生間隔やその規模から、これから起こるであろう地震をシミュレーションする過程を非常に丁寧に説明していただいた。なぜ地震の破壊域が紀伊半島沖になりやすいか、そして将来、巨大地震が比較的早い時期に起こるとするとその規模は応力の蓄積過程からみると小さくなる可能性があるという結果を示された。これはまだまだ様々なパラメーターを変えて考える必要があると思われるが非常に刺激を受ける内容となった。現在ではGPSをはじめとして地殻変動を議論するうえで観測網が密になってきており、スロースリップの検出など地震学の研究に大きな貢献をしてきているが、それはここ最近約10年あまりの成果であり、巨大地震の発生間隔からいうとまだまだ短いのが現状である。そこで歴史時代の巨大地震についてもう一度見直す必要があるのではないのだろうか。過去の災害を風化させないために、そしてこれから起こるであろう地震に備えるために。そして、このシミュレーションが地震発生予測に活用できるようになるには、地殻変動データから推定されるプレートの境界像との同化が課題であり、これからのシミュレーションのさらなる向上を望んでおります

(環境学研究科地球環境学専攻M1 石川渓太)



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