一般公開セミナー「南海トラフの巨大地震を解き明かす」開催報告

日本地震学会と名古屋市科学館は2006年10月28日に、名古屋市科学館サイエンス
ホールにて一般公開セミナー「南海トラフの巨大地震を解き明かす」を開催しました。



 この一般公開セミナーは地域の地震活動や防災の解説という内容ではなく、巨大地震の可能性が指摘されている南海トラフを題材として掘削船「ちきゅう」や基盤的観測網による新しい現象の発見といった、最新の研究成果や地震の発生の仕組みなどを広く理解していただくことに主眼がおかれたセミナーでした。そのため、聴講者が少なくなってしまうのではないかと不安がありましたが、順調に事前申し込みがあり、当日は180名が参加されました。
 開会の挨拶のあと、海洋研究開発機構の倉本真一氏による講演「南海トラフ巨大地震帯を見る、さわる、監視する―新たな地震研究の幕開け―」がありました。プレート沈み込み帯の巨大地震の発生する場所を直接掘って削ることの重要性を説いていただき、ライザー掘削船「ちきゅう」による海底掘削をアニメーションを用いてわかりやすく解説していただきました。なお、南海トラフを対象とした掘削が2007年秋から始まります。そのなかで、倉本さんは司会の名古屋大学の鷺谷威氏と一緒に紐と模型を使って、「ちきゅう」とライザーパイプのスケールをわかりやすく説明されました。また、反射法探査による詳細なプレート境界域の3次元的イメージや世界で初めて見つかった巨大地震の化石の解説がありました。
 続いて、防災科学技術研究所の小原一成氏による講演「南海トラフにおけるプレート沈み込み過程―高密度観測網による相次ぐ発見とその意義―」がありました。この講演では、近年整備された全国規模の地震観測網とGPS観測網によって明らかになったプレート境界における滑り現象についてわかりやすく詳細な解説がなされました。アスペリティ、非地震性すべり、など最近出てきた概念についての説明や、10年間隔で数年単位の継続時間をもつ長期的スロースリップや深部低周波微動とそれにともなう短期的スロースリップについても丁寧に解説されました。これによって、南海トラフにて単純に大地震が発生するのではなく、プレート境界は深さによってその性質を変え、構造と流体がその性質の変化に深く関わっていることが聴講者に理解していただけたと思います。これらの現象が見つかり詳細がわかってきたのも、観測網の整備によるところが大きいことをご理解いただけたと思います。
 最後に、名古屋大学の安藤雅孝氏による講演「今度来る巨大地震―東海、東南海、南海地震―」がありました。まずは、6千年前の名古屋の様子や市内を南北に横断する断層の存在といった身近なトピックから入ることで少し疲れ気味の聴衆を話しに引き込ませて、さらに走っている電車の中からみた断層やNHK大河ドラマの1シーンから地震の位置推定など、過去の巨大地震の歴史を紐解きながら解説するとともに、将来の巨大地震の可能性をも指摘されました。最後に、巨大地震については、南海トラフから琉球に至る超巨大地震についても触れられ、終始聴衆を惹きつけ続けた講演でした。
 各講演において熱心な質問が聴講者からあり10分間程あった質議応答時間を超えるほどで、聴講者の地震への関心の高さを伺い知ることができました。
 
 一般公開セミナー「南海トラフの巨大地震を解き明かす」を開催するにあたり、ご協力いただいた方々に深く感謝いたします。また、本セミナーは平成18年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)と平成18年度名古屋大学学術振興基金の援助を受けました。記して感謝いたします。

2006年11月8日

(名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山・防災研究センター 中道治久)


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